ドローンの産業活用でもっとも注目されていると言ってもいい配達・配送用ドローン。
今回は、そんなドローンの物流分野における現状と課題について調査してみました。
物流分野におけるドローン活用の現状
現在の物流分野におけるドローンの活用ですが、現状では研究開発と実証実験に留まっており、実用化はされていません。
昨今の技術革新によって、空撮や農薬散布におけるドローンの活用は進んでいますが、物流分野においては課題があります。
具体的な課題としては、ドローンの目視外飛行に伴う技術的な問題や、積載可能な総重量があまり大きくないこと、飛行時間などが挙げられます。
国交相は2016年に物流用ドローンポートの研究開発に向けて取り組み始めています。
これは、配送先まで飛行後、荷物を下ろし、再度離陸して戻るといった配送の流れを高精度かつ安全に行えるよう、また機体重量の増加を抑えつつ安価に対応することを目指した研究開発となっています。
詳しくはこちら
また、山間部等過疎地域において、積載率が低く、非効率的な配送が行われているといった物流分野における課題を解決するための取り組みも行われています。
配達用のドローンを都市部にて活用するのはまだまだ先の話になりそうですが、山間部など、物流拠点から遠く、配送物も少ない場所にて活用することは、企業や地域の課題解決とともに、配送用ドローンの今後の可能性を拡げる面でも期待されています。
配達用ドローンの取り組み実例
現在行われている取り組みの実例をいくつかご紹介します。
大分県では、佐伯市の山間地でドローンを使った荷物配送実験を始めています。
ドローンに約3kgの日用品を積載し、約10分間、事前に設定したプログラムで、4GLTE回線を使って運行するようです。
2018年3月には10kgもの商品を配送する実証実験も行なっており、国交省より「目視外かつ補助者なし飛行」での実施の承認を受けています。
ドローンの活用により、荷物の配送時間を66%に短縮できるようです。
海外の例では、東南アジアでのドローン配送のための基盤構築に向けて、インドネシアの政府が承認したドローンが試験飛行をしています。
中国の京東集団は、中国国内においても自動配達に取り組んでおり、配送用ドローン領域に参入して2年以上経っていますが、インドネシアにも進出しています。
すでに幅広い物流ネットワークを所有しており、多くの都市をカバーしていますが、ドローン配達が実用化されれば、注文された商品の約90%近くが一日以内に届けられるようになるそうです。
また、配達用ドローンは飛行型だけでなく、陸上を車輪で移動するタイプのものもあります。
日本郵便は、過疎地域への配達と、ドライバー不足の解消を目指しており、福島県南相馬市において配送実験を行なっています。
株式会社ZMPの「CarriRo Deli」とe-novia社の「YAPE」を活用して実証実験を行なっています。
CarriRo Deliは、走破性と取り回しやすさに重点をおいた後輪駆動の四輪構造となっており、周囲の環境を検知・認識しながら自律走行することができます。
最大積載量は50kgとなっており、用途に応じてロッカーが取り替えられるようになっています。
YAPEは、最大70kg積載可能で、電気モーターを備えた二輪構造となっており、小道や狭い空間、歩道の段差なども上り下り可能です。
また、360度ビジョンによって、周囲の障害物を検知して回避します。
配達用ドローンの今後と課題
まず、飛行型の配送用ドローンは、バッテリーに関して課題があります。
現状だと、10kg積載した場合、長くて10分程度が限界になるでしょう。
次に、気象状況に左右されやすい点です。
多くのドローンが風速5mを超えると飛行するのが大変危険になります。
配達中のリスク管理や安全確保、事故発生時に関してもまだまだ検討する余地がありそうです。
まとめ
物流分野における配達用ドローンは、人口過密地と過疎地とで形が変わってくると思われます。
都市部で飛行するタイプのドローンを活用するには、リスクがありますので、陸上配送用ドローンの普及が先になるのではないでしょうか。
逆に山間部などの人が少ないところでは、ドローンポートなどを活用し、目視外かつ補助者なしの本当の意味での自動無人飛行機を活用することができるでしょう。
物流業界におけるラストワンマイルの課題を解決する上で、非常に注目を集めており、多くの組織が実用化に向けて取り組んでいます。
実証実験の結果次第で、5年以内に実現する可能性も充分ありそうです。